理療科研究発表会

 9月20日(金)の2~4時間目に研究発表会が行われました。理療科の3年生の6名がそれぞれ一学期からテーマを決めて研究に取り組み、その成果を理療科の1・2年生や本校教職員の前で発表しました。

 1人目のテーマは、「頭痛に対する東洋医学的治療の効果」でした。緊張型頭痛のある二人を対象に、頭痛の部位と関係が深い経脈に沿って指圧施術を行い、症状の変化を調べました。頭痛の程度は大きく変化しなかったものの、「頭痛の頻度が減った」などの感想をいただいたと発表していました。また、今回は4回とも同じ経脈に施術しましたが、その日の症状に合わせて経脈を選択していれば違った結果が得られたかもしれないと考察していました。

 2人目のテーマは、「肩こり患者が訴える自覚症状と筋緊張の差についての調査」でした。肩こりを訴える人に対し、基本情報(年齢、身長、体重、職業など)、肩こりの状態(部位、原因、経過など)、日常生活(利き手、日課、入浴、睡眠など)を聞き取り、触診で左右差を確認し、自覚症状と筋緊張の関係を考察しました。様々な角度から分析をした結果、自覚症状、筋緊張、日常生活で関連しそうな面もあれば、傾向を捉えにくい面もあったと発表されました。今後、肩こりの患者さんを施術する時は今回の研究の経験を生かし、触診、問診を充実させて、その人の特性に合った治療をしていきたいと言っていました。

 3人目のテーマは、「ストレスによる百会(ひゃくえ)の反応の違い」でした。ストレスの大きさに比例して百会(頭の頂点にあるつぼ)の圧痛が強くなるという仮説を検証するために、iPadでウェブのストレスチェックを、圧痛計で百会の圧痛の度合を調べ、ハンス・セリエが提唱したストレス学説とも関連付けながら分析していました。ストレスによって必ずしも圧痛を強く感じる訳ではなく、急性ストレスでは圧痛を弱く、慢性ストレスでは圧痛が強くなる傾向がみられたことから、治療の時には百会の圧痛を確認し、患者さんのケアに役立てたいと発表していました。

 4人目のテーマは、「置鍼術(ちしんじゅつ)と雀啄術(じゃくたくじゅつ)の施術効果の持続に関する比較検証~肩こり患者への施術を通して~」でした。慢性的に肩こりを自覚している人を対象に、はり施術の手技である置鍼術(目的の深さまで鍼を刺入したまましばらく留置する)と雀啄術(目的の深さまで鍼を刺入したところでスズメが餌をついばむように鍼を細かく上下に動かす)を行いましたが、効果の持続時間に大きな差は認められなかったようです。しかし、二つの手技に大きな差はなくとも、鍼施術に慣れていない人や感受性が高い(敏感)な人には置鍼術が、鍼施術に慣れている人や感受性が低い(強い刺激が好き)な人には雀啄術の持続時間が長い傾向がみられたと発表されました。

 5人目のテーマは、「証に対する選穴の効果(血圧を指標に)」でした。今までに高血圧と指摘されたことがある人と正常血圧の人が対象で、東洋医学的に診察して証(西洋医学でいう病名のようなもの)を立て、それに対応したつぼに円皮鍼を貼って血圧の変化を調べたという内容でした。円皮鍼は直径1センチほどの丸いシールの中心に長さ1ミリほどの短い鍼が付いたものです。鍼刺激は血圧を正常値に近づける作用があるという研究がすでに行われていましたが、今回の研究では東洋医学的に選んだつぼに円皮鍼を貼付しても同様な現象がみられたという発表でした。

 6人目のテーマは、「競技前の施術がパフォーマンスに与える影響 ~プリューゲル・アルントシュルツの法則のスポーツへの応用~」でした。この法則は与える刺激に応じて筋肉や神経の興奮性が変化するというもので、中等度の刺激では興奮性を高めると言われています。この研究では、マッサージのみ、ストレッチのみ、マッサージとストレッチの併用で、それぞれ何もしない場合と比べて握力の数値が上がるのかを調べていました。結果は、刺激量が中等度以上になっていたためか、施術前より低下することとなり、スポーツ前の施術の難しさを感じたという発表でした。

 発表者は堂々と自身の研究を発表し、聴衆の質問に対しても自分の言葉で答えていました。研究で得た知識と技術、人前で発表する経験は今後の学習や卒業後に生かせることと思います。

 聴衆の1・2年生は、まだ内容を理解することが難しい部分もありましたが、発表者に質問する姿が見られました。それぞれ3年生になると発表者になりますが、先輩の発表が参考になったと思います。

 この研究発表会は本校理療科で長く続く伝統的な行事です。今回も発表者・聴衆の両者が真剣に取り組み、とても有意義な行事となりました。