点字ブロックについて 永野光彦

1 このテーマを選んだ目的

まず僕がこのテーマを選んだきっかけは、立命館産業社会学部自主ゼミ「アドヴァンス」が 実施された「高齢者疑似体験」という内容のもので、白内障疑似体験ゴーグルなどを使って河原町のとおりを歩いていると、やたらと点字ブロックが少ないのを感じました。

それに、普段は、大して気にして歩いていないもしくはかえって邪魔だと感じていたものが、自分の目が不自由になって初めて必要性がわかったというのが大きな動機でした。

また、いろいろと調べていく中で、点字ブロックそのものの大きさなど様々な形があることを知り、実際にはまだ統一されていないことを知りました。そのような中で、自分の町はどのようになっているのだろうかということに興味を持ちはじめました。以上がこのテーマを選んだ動機です。

2 点字ブロックの定義およびその種類について

さて、点字ブロックについてですが、正式名称は視覚障害者誘導用ブロックといい、これの定義については以下のとおりです。

視覚障害者誘導用ブロックは、視覚障害者が通常の歩行状態において、主に足の裏の触感覚でその存在及び大まかな形状を確認できるような突起を表面につけたブロックであり、道路及び沿道に関してある程度の情報をもって道路を歩行中の視覚障害者に、より正確な歩行位置と歩行方向を案内するための施設です。

また、 これには主に以下の2種類があります。
(1)位置標示用(位置ブロック(タイル))
 いわゆる点状ブロックのことで、主な出入り口、通路の入り口などの位置を標示し、または歩行経路の途中で、方向転換をする箇所、一時停止を必要とする箇所および段差を伴う個所を予告しもしくはそれらの位置もしくは箇所を予告するためのものです。
(2)誘導標示用(誘導ブロック(タイル))
 いわゆる線状ブロックで、目的位置への経路誘導をするためのものです。
 この他にも小判状ブロック(線状ブロックと役目は同じ)などがあります。

※なお、現在点字ブロックの大きさ、色などは近年JIS2規格によって統一の動きはありますが、現在のところ統一されておらず、その種類は50種類以上だと言われています。

3 点字ブロックの歴史

以下は点字ブロックが作られた経緯です。名前は伏せてあります。

◆点字ブロックの発明
ある日、Sさんは、一人の盲人が道を横切ろうとした際、クラクションを鳴らされその場にうずくまってしまう光景に出会った。その晩から、Sさんは目の不自由な人が安全に歩ける手段はないものか、あれこれアイデアを出した。

眠れないので外に出て寝静まった道路を歩いた。人けのない横断歩道のきわに立って目を閉じると、車の速さが恐ろしいものに感じられた。危険な所と安全な所とを区分けする事が必要だと、Sさんは考えた。平らなブロックでは、どこから危険な箇所になるのか分からない。そこで、何か突き出たもののあるブロックを作ろうとした。そのときヒントになったのは、「苔と土の境が靴を通して分かる」というIさんのひとことであった。一番下の弟・S郎と共に、形・大きさ・突起の形などをあれこれ試行錯誤しながら、ついに点字ブロック第1号を完成させた。昭和40年1月のことであった。

Sさんは、この点字ブロックを日本の各都市・駅に敷き詰めようと考えた。この事業に生涯をかけようと腹を決めたのである。しかし、その事業に必要な費用はどこからも出るはずはなく、すべて旅館業からの利益をあてたのである。

◆世界で初めての点字ブロックの設置
昭和42年、Sさんは、点字ブロックの普及のため、岡山県盲人協会会長・K氏をたずねた。ところが、「何しに来た。とっとと帰れ!」と追い返されてしまった。どこの誰ともわからぬ男が、盲人のためと言いながら金もうけしようとわけの分からぬものを売り込んできたと、誤解されたのであった。

しかし、Sさんはこれにこりず、何回となくK氏をたずねた。やがて、K氏は、点字ブロックの素晴らしさを理解し、また、Sさんの志に心を打たれた。その後、K氏は、Sさんのよき協力者として、点字ブロックの普及につとめるのである。

また、Sさんは点字ブロックを敷いてもらえるよう、何度も岡山県・建設省とかけあった。そして、ついに昭和42年3月、点字ブロックが敷かれることになった。世界で初めて、岡山県立岡山盲学校近くの横断歩道口に、Sさんが寄贈した点字ブロック230枚が設置されたのである。友人・Iさんもかけつけた。セメントも乾かぬ真新しい点字ブロックの上に、Iさんは白い杖をつきながら立ち、これならいけると直感したと言う。

◆普及への道のり
新しい歩道や交差点ができるたびに、Sさんは県や市に点字ブロックを寄贈していった。少しでも、点字ブロックを理解してもらい、普及するためである。そのころ、Sさんは、横断歩道の信号の赤・青・黄を盲人に振動で知らせる振動触知式信号機の開発も行った。この新しい信号機は、盲人から高い評価を受けた。

しかし、この試作品の開発にも多額の費用を必要とした。湯水のごとく出て行く出費に、Sさんは何度となく「もうこのへんでやめようか、手を引く時期ではないか」と悩むのであった。旅館の建物も古くなり、雨漏りはひどく建物もガタガタだった昭和43年9月、これまでの心労がもとで病院のベッドにいたSさんに、うれしい知らせが飛び込んできた。

宇都宮市の交差点に振動触知式信号機16機と、点字ブロック250枚が初めてセットで設置されるという知らせである。それ以後、少しずつ国や県の費用・税金で、点字ブロックが設置されるようになった。国や県が、盲人の暮らしに役立つものと、点字ブロックの価値を認めてくれた証しであった。

くもりきった灰色の空に、やっと念願の青空が顔をのぞかせたのである。日本全国の主な街や駅に設置された点字ブロック。それを発明した人の名も知れず、その設置距離はどんどん伸びていった。Sさんは、それでもうれしかった。

※それ以前に、実験的に点字ブロックを岡山県の盲学校の校内に敷設したそうです。だから正確には岡山盲学校の点字ブロックが世界最初らしいです。

4 点字ブロックの設置基準について

先にも書きましたが、現在点字ブロックの大きさ、色などは統一されておらず、場所によってバラバラです。それをふまえての説明ですが、まず、国、都道府県、市町村それぞれにたとえば、点字ブロックならそれの設置基準が定められています。

これは、一般的に国の基準が一番甘く、ついで都道府県、各地方公共団体の順番になります。また、必ず設置しなければいけない場所と、指導はできるが特に義務はないという場所に分かれ、また、エレベーターには設置しなければいけないがエスカレーターには設置しなくてもよいというように、設備によっても様々です。

もし必ず設置しなければいけないところに設置していなければ、行政処分(建物取り壊し、運営停止、建築禁止)などを下すことができます。ただし、任意である場所は、もし違反していても、処分は下されません。また、建物を作るときは、「事前協議書」、「工事完了報告書」などを各担当部署に提出し、許可をもらわなければいけません。

これについては、まず事前報告書を見て、それぞれ基準に合っているかをチェックします。もしここで基準に合っていれば、そのままオッケーをだし、そぐわなければ、指導します。ここで、指導に従わなければ、その計画は残念ながら実行されません。 次に工事完了書ですが、これは出された時点で、係りのものがその場所へ実際に見に行って、それぞれの基準に合っているかを調べるそうです。このとき、メジャーや定規などを使って、きっちりとやるそうです。

もしここでそぐわなければ指導そして修正、それに従わなければ取り壊しの処分が下されます。この指針はわが町では平成9年度に成立しましたが、それ以前に建てられた建築物には、指導できないそうです(費用面などもあるため)。

5 点字ブロックの敷設方法

第一に、視覚障害者誘導用ブロックと通路などの表面との色に変化をつけ、このブロックが明確に識別できるようにする。

第二に、通路などの表面にあわせて連続して敷設する。 ただし、通路などの床材の表面に、視覚障害者誘導用タイルを貼り付ける場合で、雨水等の排水を必要とする場合は、視覚障害者誘導用タイルの間隔を1センチ以内で離して敷設することができるものとする。

第三に、視覚障害者誘導用ブロックを敷設するときは、視覚障害者誘導用ブロックの凸部が、通路などの表面から浮き出るものとする。ちなみにJ市で敷設されている点字ブロックの大きさは30センチ角で、点状ブロックの場合点の幅35ミリ程度、突起の高さ5ミリ程度となっています。また、線状ブロックにいたっても、同様のサイズです。

6 歩行誘導の方法

さて、次に、歩行誘導の方法ですが、ここでは主に3つの例をあげたいと思います。

(1)直線誘導
 歩行経路は直線となるように誘導する。視覚障害者誘導用ブロックは、歩行経路の長さに応じた誘導ブロックを直線で1列に敷設する。ただし誘導ブロックの両端は、終点を予告するために、位置ブロックとする。

(2)直角誘導
 歩行経路が途中で屈折し、方向転換を途中で必要とする場合は、屈折部分が直角となるように誘導する。屈折する部分には、屈折歩行となる地点であることを、警告しまたは予告するために、その角になる視覚障害者誘導用ブロックおよびその前後各一枚の視覚障害者誘導用ブロックを位置ブロックとする。歩行経路が交差する場合も同様とする。

(3)段差の警告
 歩行経路の途中に段差がある場合は、その部分を警告するため、段差の前後に位置ブロックを敷設する。(段差の前は点状ブロックが敷設)ただし、段差が3段以上階段である場合は、階段による敷設仕様とする。

7 点字ブロックに関するさまざまな見方

(1)色に関して
 きれいなモザイクの歩道で、モザイクを利用して模様までつけられていました。その工事現場を通った私は「???」。モザイクの材質は分かりませんが1枚が15cmぐらいの正方形。もちろんその面は平らな訳ですが、中に点と線の突起を付けて焼き上げたものが混じっています。つまり、出来合いの点ブロを敷くのではなく、初めから設計されて組み合わせるとちゃんと線状の誘導部分が並び、歩道の縁には点状部分が並びます。色はまったく変えてないので、近寄って見ない限り、私(晴眼)にもそんな突起があることは分かりません。(R.Iさん 60代 女性 埼玉県在住)

(2)突起に関して
 少し気になったわけがあって、私は全盲の友人にその工事現場まで付き合ってもらいました。「ちょっとこの上を歩いてみて」。彼は先天盲の30代、スニーカーをはいていました。「全体が他より高くなっていることしか分からないな。点だか線だか白杖で調べてもちょっとむずかしい。」案の定彼は私の心配を裏付けてくれました。つまりそのモザイクの上に作られた点はオセロの駒のように上が平らで、しかも大きい。その上、隣の点との間が非常に狭いのです。これでは点の役目を果たしていません。

このときは道路工事の管理事務所に行きました。「この工事を発注したのはどこですか?」点ブロの企画について調べてもらいたいのでというと管理事務所にいた人が「この点字ブロックの設計は委託されて私どもが苦心の結果デザインしたものです。示された点字ブロックの基準は満たしています。点の数も線の本数も基準通りです。色は赤か黄色が望ましいとあるだけで、他の色ではいけないとは書いてありません。とにかくお金がかかっていますよ。」点の大きさ線の太さ、そして点と点、線と線との間隔も決める必要がありそうです。

このモザイク歩道は今でもそのままです。後に弱視の友達とその歩道を歩いたとき、「なんという歩き方をするのよ酔っ払いみたい」と私は笑ってしまいました。どうしたのだとお思いですか?模様つきの歩道は、あちこちに何かが置いてあるようで彼女は怖くて歩けなかったのです。
(R.Iさん 60代 女性 埼玉県在住)

(3)点字ブロックを取り巻く環境
 点字ブロックの上を歩くときには、「障害物にぶつからずに、歩道をまっすぐに歩くことができる」という安心感があります。なれている道ではスピードも上がり、考え事をする余裕もあります。

ところが、油断は大敵、現実はそんなに甘くありません。ブロックの上にも様々な障害物があるのです。ブロック上で立ち話をする人達も、厄介な障害物です。この他、放置自転車や街路樹の葉っぱ、自動車やゴミ袋など、多くの障害物があります。

一番恐ろしいのは、電柱や看板です。多くのばあい、柱を迂回するような形でブロックが設置されていますが、柱を避けるためには、よほど注意深く歩かなければならず、とてもではないですが危険で怖いです。全盲の人ならば、一度は柱と正面衝突した経験を持っているはずです。嘘だと思ったら、白杖を持った人のひたいを観察してみてください。

道路交通法には、歩行者の歩行速度に対する制限が設けられていないそうです。視覚障害者が、急ぎ足ですたすた歩けるような環境を整えてほしいものです。

点字ブロックは、行き先不明の案内板です。視覚障害者が、一度も行ったことのない目的地にたどり着けるように、点字ブロックと音声誘導とを組み合わせた整備が望まれます。
(T.Yさん 20代 男性 熊本県出身)

(4)アメリカとの比較
 アメリカの歩道などにある誘導ブロックはコンクリートに溝を掘ったような物でした。バート(地下鉄)のホームは日本と同じように真っ黄色のブロックが幅広く付いていました。乗り場の部分は黒地に黄色のフロックで見やすかったです。

サンフランシスコ市内で見かけた私のお気に入り(?)は、歩道のカラーの縁取り。赤、黄、青、緑、白。歩道の上と車道側の側面にも色が付いているので、見やすくて便利だと喜んでいたら、弱視用ではありませんでした。

赤は近くに消火栓があるので駐車禁止。青は車いす用の乗降がOK。緑は20分までの駐車ができる。白はその建物の関係者や客の駐車ができるが、その以外はダメなど。英語が分からなくても、理解が出来るルールでした。

今回はケーブルカーに乗りませんでしたが、道路の中央にケーブルカー乗り場が所々にあって、誘導ブロックが必ずついているそうです。日本に帰ってきて、「点ブロがいっぱいあるのに歩いている視覚障害者が少ないなぁ」と感じました。

アメリカの誘導ブロックを白杖でなぞった感触は、「本当にこれでわかるの?」と私だけでなく、近くにいた団員達の感想でした。日本のようにどこにでもあるのではなく、交差点の歩道の端などにありました。しかも歩道とほとんど同じ色なので、目立たないので白杖を使っていないと気づかないかもしれません。溝を掘ってあるので、車いすで通っても支障がないと思います。

ご存じかもしれませんが、カリフォルニアで始まった障害者運動は、車いすを使用している人たちが中心でした。1973年に歩道から車道に降りる部分を一部カットして車いすで使いやすくする「縁石カット」が始まりました。

私も白杖を使って歩いてみて感じたのですが、交差点を渡り終えた所は日本と同じ位の段差があるのですが、歩道の半分位の広さは斜めに縁石カットされているので、車いす使用者も視覚障害者も両方使いやすいです。歩道が狭い場合は、歩道を少し歩き始めると、道路に対して直角に縁石カットしてありました。

サンフランシスコは坂の街と言われます。43の丘があり、見晴らしは良いけれど、乗り物がないとかなりきついようです。電動車いすが多いのもそのせいかもしれません。バートのホームで体格の良い男性が手動の車いすでさっそうと現れた時は、カッコ良かった。顔を見なかったので、どの年代の人かは分からなかったけれど・・・。
(Y.Mさん 30代 女性)

8 まとめ

今回点字ブロックというテーマでやってきましたが、普段何気なくある点字ブロックの誕生秘話、用途から、「点字ブロック=視覚障害者が利用するもの」と思われがちであったが、実は当事者にとっては違ったりすること、実際にあっても使いづらいこと、さらに、アメリカと比べて日本はかなり整備が遅れていることなどがわかりました。

また、点字ブロックというのは何も全盲の方だけが利用されるわけではありません。弱視の方など、光は感じ取れるが、はっきりと見えないという方も利用されます。そのようななかで、最近では、外観重視のためか、フロアの色とブロックの色とが、酷似してあるところが多々見受けられると思います。一応、点字ブロックの色は、黄色もしくは赤というように決まっていますが、これは指針であり、実際にはなんの効力もありません。

また一方では、点字ブロックの存在について、あまりよく思ってない人たちもいます。例えば、車椅子を利用している人たち、そして、杖を突いて歩いている人などは、その突起のために、躓いたりすることもしばしばあるそうです。

また、視覚障害者の中にも、点字ブロックの必要性を感じていない人も多いのも事実です。実際に、なにか、道路の端に5cmほどの縁石があれば、それで歩道と判断でき歩けるそうです。
いずれにせよ、さまざまな人が、安心して利用できるような道路になっていってほしいし、また社会全体がお互いに気持ちよく利用できるような配慮も必要になってくると思います。